みどころ


ポンペイ

紀元後79年、イタリアのナポリ近郊のヴェスヴィオ山で大規模な噴火が発生、
ローマ帝国の都市であったポンペイが火山噴出物に飲み込まれました。
火山灰で埋没した古代の居住地には、
当時の人々の生活空間と家財がそのまま封印されています。
この「タイムカプセル」の中身を解き明かすべく、
ポンペイでは18世紀から現在に至るまで発掘が続いています。
本展覧会では、モザイク、壁画、彫像、工芸品の傑作から、豪華な食器、調理具、
といった日用品にいたる様々な発掘品を展示。古代ローマの都市の繁栄と、
市民の豊かな生活をよみがえらせます。
ポンペイ遺跡の膨大な遺物を収蔵するのがナポリ国立考古学博物館です。
本展覧会は、同館が誇る名品がかつてない規模で出品される
「ポンペイ展の決定版」ともいえる展覧会となります。
2000年前に繁栄した都市と、そこにいた住民たち。
その息吹を体感できた時の感動と興奮。
特別展「ポンペイ」では、発掘資料の実物ならではの魅力をお楽しみいただけます。

ナポリ国立考古学博物館の
至宝150点が一挙集結!

古代ギリシア・ローマ、特にポンペイ周辺から出土した遺物の質と量で他のコレクションの追随を許さないイタリア・ナポリ国立考古学博物館。 本展はその全面的な協力のもと、日本初公開を含む約150点の名品を紹介します。

ナポリ国立考古学博物館

ナポリ国立考古学博物館

18世紀にナポリ王カルロ7世が進めたヴェスヴィオ地区発掘調査による出土品と、その母エリザベッタから受け継いだファルネーゼ・コレクションを中心に、 王立博物館として1816年に開館。1860年イタリア統一にともない国に移管、現在に至ります。

博物館で遺跡めぐり、
2000年前にタイムスリップ!

ポンペイ遺跡の魅力は、何といっても、建造物や出土物の保存状態がよいことです。遺跡を訪れると、 2000年前の街にタイムスリップしたように感じます。本展の後半では、「ファウヌスの家」「竪琴奏者の家」「悲劇詩人の家」に注目し、それぞれの一部を再現展示します。 会場内を歩きながら、遺跡や生活空間の雰囲気を感じることができます。

再現展示イメージ

再現展示イメージ
上左:アトリウム(広間、「悲劇詩人の家」より)
Dr. Bettina Bergmann監修のもとVictoria Iが制作した模型に基づいて作図
上右:ペリステュリウム(回廊つき中庭、「竪琴奏者の家」より)
Dr. Bettina Bergmann監修のもとMr. James Stanton-Abbottが制作したCGに基づいて作図
下:エクセドラ(談話室、「ファウヌスの家」より)

圧倒的な没入感、
めくるめく高精細映像体験!

大迫力のヴェスヴィオ山噴火CG、臨場感あふれる「ファウヌスの家」3D映像、そしてナポリ国立考古学博物館で修復が進む「アレクサンドロス大王のモザイク」を高精細画質で! 巨大ディスプレイと最先端テクノロジーで古代都市ポンペイのすがたを体感いただきます。

※「バックス(ディオニュソス)とヴェスヴィオ山」は、噴火CG映像とあわせ、会場では「序章:ヴェスヴィオ山噴火とポンペイ埋没」コーナーにてご覧いただけます。

バックス(ディオニュソス)とヴェスヴィオ山

バックス(ディオニュソス)とヴェスヴィオ山

140×101cm
噴火直前のヴェスヴィオ山が描かれたフレスコ画。山の形は噴火によって大きく変わる前の姿であり、 斜面にはブドウ畑が広がっています。左側に立っているのはワインの神バックスで、ブドウの実に覆われた姿で表現されています。

第1章
ポンペイの街:公共施設と宗教

古代ローマの都市生活に欠かせないのが、街のインフラと公共施設です。1万人ほどの人口を擁したポンペイの街にも、フォルム(中央広場)、劇場、円形闘技場、浴場、運動場といった公共施設がありました。 本章では、こうした公共施設にまつわる作品を鑑賞しながら、ポンペイの街へ思いを馳せていただきます。神々を祀る神殿もまた都市に必要な要素でした。ポンペイで信仰されたアポロ、ウェヌス、イシスといった神々に関する作品を通じて、ポンペイにおける宗教と信仰についてもご紹介します。


円形闘技場での乱闘

169×185cm

剣闘士興行のさなか、観客として来場していたポンペイと近隣都市のヌケリア(現ノチェーラ)の住民の間で実際に起きた抗争を描いたフレスコ画。当時の円形闘技場の様子が詳細に描かれています。

円形闘技場での乱闘

ポリュクレイトス「槍を持つ人」

高さ212cm

古代ギリシアの彫刻家ポリュクレイトスが制作したブロンズ像の傑作「槍を持つ人」の複製品(ローマン・コピー)とされる。街の運動場から発掘されたもので、保存状態がよく、ギリシア彫刻の理想的な均整美を伝える教科書ともいえる大理石像。

ポリュクレイトス「槍を持つ人」

ビキニのウェヌス

高さ63cm

サンダルをぬぐ女神ウェヌスを表現した大理石像。傍らでは、プリアプスとクピドが女神を支えています。効果的に配された金彩が残る美しい作品で、邸宅の中庭を飾っていました。ウェヌスの沐浴は古代ギリシア・ローマで人気のある題材でした。

ビキニのウェヌス

辻音楽師

58.7×56.5cm

喜劇の仮面をかぶり、楽器を演奏する小さな楽団が、ある家を訪問しています。前300年頃のアッティカ新喜劇の一場面を描いたとされ、ギリシア人のモザイク作者ディオスクリデスの署名のある、極めて優れたモザイク画です。 ポンペイが位置するカンパニア地方は演劇が盛んで、街の劇場の賑わいが目に浮かびます。

辻音楽師

フォルムの日常風景

49×163cm

ポンペイの街のフォルムを描いたフレスコ画の一部。金物や織物を売る商人、品物を見定める人びとの姿があります。フォルムは市庁舎や市場や神殿が立ち並ぶ街の中心で、そこかしこに露天の店が広がり、人びとが集う場所でした。

フォルムの日常風景

第2章
ポンペイの社会と人びとの活躍

ポンペイの街で暮らした裕福な市民たち。本章では、その暮らしぶりが分かる出土品を展示します。宴席を飾った豪華な品々、教養人であることを示そうとした家財や装飾から、裕福な市民の嗜好が浮かび上がります。 また、街の有力者の多様な出自にも注目します。ポンペイの資産家には、ビジネスの才覚でのし上がった解放奴隷や低い出自の女性もいたのです。こうした人物に因んだ発掘品からは、一発逆転のチャンスがあった古代ローマ社会の動的な側面がうかがえます。


ブドウ摘みを表わした小アンフォラ(通称「青の壺」)

高さ32cm

カメオ・ガラスと呼ばれる技法で制作された容器で、紺青色ガラスに白色ガラスを重ねています。精緻な浮彫りが白色ガラスの層に施され、ワイン作りに勤しむクピドたちの姿などが表現されています。 完全な形のまま現存するカメオ・ガラス容器はとても貴重です。

通称「青の壺」

マケドニアの王子と哲学者

200×325cm

中庭を囲む列柱廊(ペリステュリウム)を飾ったフレスコ画。右側上の人物は、盾の紋章と独特な帽子から、マケドニアの王族と思われます。左側の哲学者とともに、家の持ち主のギリシア文化への素養を感じさせます。

マケドニアの王子と哲学者

書字板と尖筆を持つ女性(通称「サッフォー」)

37×38cm

書字板と筆を持ち思索にふけるような仕草の女性の肖像。男性の肖像が現実的な姿で描かれるのに対し、女性の肖像はしばしば美しく理想化されました。 その知的な美しさから、古代ギリシアの女性詩人であるサッフォーという通称名で呼ばれています。ナポリ国立考古学博物館で最も著名な肖像の一つ。

書字板と尖筆を持つ女性(通称「サッフォー」)

エメラルドと真珠母貝のネックレス

34.5cm

金でできた細かな輪を鎖のようにつなげて帯状にし、真珠母貝を加工して作られた装飾とカットしたエメラルドを交互に配した首飾り。古代ローマではこうした色彩豊かな装飾品が珍重されました。

エメラルドと真珠層のネックレス

テーブル天板(通称「メメント・モリ」)

55.5×49.3cm

死を象徴する髑髏の左に、権力と富を表す笏と紫のマント、右に不幸を示す貧者の持ち物が描かれたモザイク画。メメント・モリとは「死ななければならないことを忘れるな」という意味。 古代ローマの社会では、いかなる身分や立場であろうとすべての人に平等に死が訪れることを意識し、翻って今を楽しもうという気風がありました。

通称「メメント・モリ」

ヘルマ柱型肖像(通称「ルキウス・カエキリウス・ユクンドゥスのヘルマ柱」)

高さ173cm

金融業者カエキリウス・ユクンドゥスの邸宅から出土したブロンズの肖像。大理石柱に刻まれた銘文には「解放奴隷フェリクスが建立」とあり、 解放奴隷であったユクンドゥスの父親の肖像であると考えられます。奴隷階級出身の一家が街の有力者となった歴史を物語ります。

ヘルマ柱型肖像

第3章
人びとの生活:食と仕事

ポンペイの街中にはパン屋や、テイクアウト可能な料理屋があり、手軽に食事をとることができました。裕福な家には台所があり、使用人たちが調理し、食事を供しました。 本章では、台所用品や食器類、出土した食材を展示し、都市の食生活にせまります。また、医療用具、画材、農具、工具など、ポンペイの住民が使っていた仕事道具を紹介し、 実際にポンペイに生きた人びとの日常生活に触れていただきます。


ユピテル=アンモン形の錘つき竿秤

高さ67cm

店先での小売りに使われた道具。錘を吊るし、皿の上に乗せた品物の重量を測りました。錘には、神の頭部を模ったデザインが多く、本資料には、 ギリシアのユピテル(ゼウス)とエジプトのアンモン(アメン)が習合したユピテル=アンモンのブロンズ頭像があしらわれています。

ユピテル=アンモン形の錘つき竿秤

外科器具入れ(箱入薬石、スプーン、探り針など)

長さ17.5cm

ポンペイからは傷病の処置や外科手術に用いられた道具が出土しています。こうした外科器具のいくつかは20世紀にいたるまでほとんど形が変わっておらず、古代ローマの医学の水準を示しています。

外科器具入れ

パン屋の店先

69×60cm

当時の主食は今と同じパン。ポンペイ全体で30軒ほどのパン屋があったと考えられています。実際にこのフレスコ画に描かれたものと似た形をしたパンそのものも出土しており、本展でも展示します。

パン屋の店先

炭化したパン

直径20cm


炭化したパン

第4章
ポンペイ繁栄の歴史

本章では、ポンペイ繁栄の歴史を示す3軒の邸宅「ファウヌスの家」「竪琴奏者の家」「悲劇詩人の家」に注目し、会場内に邸宅の一部を再現します。モザイクや壁画の傑作、出土した生活調度品を鑑賞しつつ、 2000年前の邸宅の雰囲気を感じていただきます。「ファウヌスの家」は前2世紀にさかのぼる古い邸宅で、ヘレニズム美術屈指のモザイク装飾が残されています。「竪琴奏者の家」ではポンペイがローマ化し、 帝政期になってローマ文化が黄金時代を迎えた頃のフレスコ画、「悲劇詩人の家」では噴火直前に描かれたフレスコ画が知られています。順を追って展示品を鑑賞することで、ポンペイの繁栄の歴史を見ることができます。


踊るファウヌス

高さ71cm

サテュロスとも同一視された牧神ファウヌスの躍動的なブロンズ像。発見されたのはポンペイ随一の邸宅で、この像の存在により「ファウヌスの家」と名付けられました。ヘレニズム彫刻の傑作です。

踊るファウヌス

猛犬注意

77.5×78.5cm

家の玄関に敷かれた床モザイクで、赤い首輪を付けた黒い犬の絵を描いて、訪問者に番犬がいることを注意喚起しています。 同じような事例は、「悲劇詩人の家」をはじめ遺跡内の数か所で見つかっています。

猛犬注意

イセエビとタコの戦い

143×143cm

プトレマイオス朝エジプトの自然主義の影響を受けて生み出された、当時好まれた主題です。トリクリニウム(ダイニングルーム)の床を飾ったモザイク画で、 描かれた魚介類は裕福な市民の美食への意識を反映していたのかもしれません。

イセエビとタコの戦い

葉綱と悲劇の仮面

49×280cm

「ファウヌスの家」の入口に配された床モザイク。来訪者は、画面いっぱいに詰まった果実と植物から、家の豊かさを感じたことでしょう。ギリシア悲劇の仮面もヘレニズム・ローマ世界で人気のあった題材。家の主が文化人であることをうかがわせます。

葉綱と悲劇の仮面

ナイル川風景

73×145.5cm

ナイル川の景観と動植物を描くモザイク画は、ヘレニズム時代のアレクサンドリアで生み出され、地中海世界に広まりました。本作はその最初期の作例のひとつ。 「ファウヌスの家」のエクセドラの敷居の床で、有名な「アレクサンドロス大王のモザイク」の手前に位置します。大王のエジプト遠征を想起させる効果があったと考えられます。

ナイル川風景


第5章
発掘の今むかし

本章では、18世紀から現在に至る発掘の歴史を振り返ります。79年のヴェスヴィオ山の噴火で埋没したエルコラーノ(ヘルクラネウム)、ポンペイ、ソンマ・ヴェスヴィアーナの3遺跡をとりあげます。 かつての発掘は美術品を獲得するための「宝探し」でしたが、現在では厳密で慎重な発掘調査が行われています。同時に、遺跡や出土物の保護が、特に重要な課題となっています。 有名な「アレクサンドロス大王のモザイク」も表面の保護に続き、裏面の補修に向けた状態の確認作業が始まっています。本章では、こうした現在進行中の修復作業についても、リアリティのある映像を交えてご紹介します。


ソンマ・ヴェスヴィアーナ全景

ソンマ・ヴェスヴィアーナ全景

東京大学ソンマ・ヴェスヴィアーナ遺跡調査団提供

ディオニュソス像の頭部

ディオニュソス像の頭部
(2003年10月6日に出土)

東京大学ソンマ・ヴェスヴィアーナ遺跡調査団提供

ヴェスヴィオ山周辺の遺跡

ヴェスヴィオ山周辺の遺跡


アレクサンドロス大王のモザイク

幅585cm、重量は8トン近い作品。19世紀に発掘され、20世紀初頭にナポリ国立考古学博物館の壁面に移設されて以来、100年が経過しています。 2021年1月末に、長期保存に向けた修復作業が始動しました。本作については、本章にて修復の映像をご覧いただけるほか、4章においても、高精細画質で作品の細部までお楽しみいただけます。

アレクサンドロス大王のモザイク

※参考画像。本作は出品されません。映像のみでの紹介となります。


アレクサンドロス大王のモザイク

専門機関による作品内部の診断調査


豹を抱くバックス(ディオニュソス)

高さ152cm(膝下と台座を含む、現存部分は106cm)ノーラ歴史考古学博物館蔵

豊穣と葡萄の神、ディオニュソスが豹を抱えて振り向く姿の大理石像です。東京大学の学術調査隊がソンマ・ヴェスヴィアーナで発掘し、2005年の愛知万博にも出品されて大きな話題となりました。 日本隊の成果を代表する出土品です。

ディオニュソス